ラグビーワールドカップの決勝トーナメントが始まり、白熱した試合が続いています。日本が予選リーグを突破できなかったのは残念ですが、ベスト8に進んだ各国のプレーは、力強く速く華やかで、さすがと思える見応えのある試合を見せてくれます。
準々決勝の4試合はいずれも僅差のスコアで勝負を分けており、どちらのチームが勝ってもおかしくないような好試合ばかりでした。それ故に、負けた側は、大変悔しい思いをしたのではないでしょうか。
しかし、試合後の各国のラグビー選手たちは、負けた側はその悔しさをぐっとこらえ、ノーサイドの精神に則って、相手チームの選手を讃えることを忘れません。反対に、勝ったチームも決して奢らず、必ず相手チームを讃えます。勝者も敗者も共に輝いているその場面は、いつ見ても心を打たれるのです。
また、競技は全く別物ですが、日本国内では先日、将棋の藤井聡太さんが史上初の八冠を成し遂げ、大きなニュースとなりました。将棋においては、勝敗が決した後に、お互いが対局を振り返る「感想戦」というものがあるそうです。初めて感想戦の存在を知った時、将棋をしない私は、「試合で負けた後に、悔しさを押し殺して対局を振り返ることなんて、よく出来るな…」と思ったものです。
これもラグビーのノーサイド精神に通じるものがあり、お互いに全力で戦ったからこそ、負けた方は胸を張って勝者を讃え、勝った方も決して奢らず、相手を認めることが出来るのでしょう。
必ず勝者と敗者が生まれるこうした勝負の世界の中で、常に自らの心を律し、勝敗に関わらず相手を認めていくということは本当に難しいことだと思います。そのことが出来るからこそ一流のプレイヤーとなれるのかもしれませんね。
さて、私たちは、ともすれば自分の望みに反することがあれば、そっぽを向き、自分の方が正しいのだから嫌味の一つでも言ってやろうという慢心を抱えていないでしょうか。
邪見驕慢悪衆生
『正信念仏偈』
(よこしまな考え方や間違ったものの見方をして、おごり、たかぶりの中で、生きている我ら)
との親鸞聖人の言葉が胸に刺さります。
自分の心を律し、省みながら、互いが認め合えるような社会を実現していきたいですね。